JR東日本におけるリアルタイム運行情報の利活用

「JEMAPS」による社内データ可視化と生成AIで実現する「どこトレダイヤル」の内製開発

東日本旅客鉄道株式会社
イノベーション戦略本部
デジタルストラテジー推進ユニット・
Digital & Data Innovation Center

羽田野湧太

自己紹介 - 学生時代に交通×ITの虜となり鉄道会社のIT部門へ -

羽田野 湧太
東日本旅客鉄道株式会社
イノベーション戦略本部
デジタルストラテジー推進ユニット
Digital & Data Innovation Center

羽田野 湧太

IT・デジタル採用
社会人4年目

高校

2016年: 武蔵野大学第二回理工学コンテスト 最優秀賞
(羽田空港へのダイヤ改正乗客シミュレーション)

2018年: 朝ラッシュ時のダイヤに関する卒業研究

大学

2019年: 第2回東京公共交通オープンデータチャレンジ 優秀賞

2020年: 第3回東京公共交通オープンデータチャレンジ 審査員特別賞

2022年: 第4回東京公共交通オープンデータチャレンジ 最優秀賞

2022年: 卒業論文 Multi-objective Searching on Multimodal Transportation Networks*
2022 13th International Congress on Advanced Applied Informatics (IIAI-AAI-Winter)

入社

2022年 4月: 仙台支社研修

2022年 8月: 池袋駅(改札・みどりの窓口)

2023年 8月: JR東日本情報システム出向

2023年10月: 都知事杯オープンデータチャレンジ 技術賞

2023年11月: JR東日本 Digital & Data Innovation Center(JR東日本情報システム)

2024年 3月: アーバンデータチャレンジ 銀賞・銅賞・GTFS特別賞・国土交通データプラットフォーム特別賞

2025年: 公共交通オープンデータチャレンジ2024 準最優秀賞

2025年 8月: JR東日本 Digital & Data Innovation Center(JR東日本)

現在

現在の業務

  • 内製開発組織DICeにおけるAI活用や開発運用効率化の推進
  • プロダクトの開発標準的なサムシングの検討、共通化
  • 知見の共有や内製開発組織DICe全体の技術力向上
  • 内製開発組織DICeの社内外でのPR
  • どこトレダイヤルなど内製プロダクトの開発
  • 案件収集、検討
  • 契約業務

公共交通オープンデータチャレンジでの受賞作

第2回:優秀賞

羽田野湧太、村松波、玉井亮央
リアルタイムな遅延を考慮した経路検索エンジン。列車ごとの混雑もシミュレーション。

第3回:審査員特別賞

羽田野湧太
出発時刻ごとの所要時間を可視化することで、一般的な乗り換え案内でなく、経路ごとにいつ出発するのが早くなるかを検索。

第4回:最優秀賞

羽田野湧太、佐波哲朗
一部路線が運休した場合に、代わりに利用されることで混雑する列車、接続列車が無くなることで空く列車をシミュレーション。

第5回:準最優秀賞

齋藤悠宇、富木菜穂、羽田野湧太、三輪哲大
リアルタイムな位置情報を基に、駅に着いたタイミングや海が見えるタイミングで通知。通知先はWebフックや専用アプリなど柔軟に対応。

※所属先で行ったものではなく学生時代や趣味で行ったものです

2. 会社紹介

JR東日本について

会社概要

JR East Area Map
社員数
44,790
事業
エリア
関東・甲信越から東北の1都16県
海外:ロサンゼルス、パリ、インド、タイ、台湾など
線区数69線区
営業キロ7,418.7km (BRTを含む)
駅数1,682駅 (BRTを含む)
列車本数11,863本 (1日あたり)
車両数12,216両
輸送人員約1,608万人 (1日あたり)

(列車本数は2025年3月ダイヤ改正時データによる)

主な
事業領域

 

  • 運輸事業: 鉄道、バス、モノレールなど
  • 不動産・ホテル事業: ルミネ、アトレ、ホテルメッツなど
  • 流通・サービス事業: NewDays、acure自販機など
  • IT・Suica事業: Suica、JRE POINTなど

(グループ会社含む)

2.2 DICe:内製開発プロダクト紹介

JR東日本グループのDXを加速させるため、2023年10月に設立された組織「Digital & Data Innovation Center」の通称です。
グループ内に分散するデータの利活用推進、生成AIの積極的な活用、アジャイル開発によるシステム内製化、そしてこれらを担う高度IT人材の育成を主なミッションとしています。

トラベルコンシェルジュ

お客さま向け

どこトレダイヤル

お客さま向け

線路設備モニタリングシステム

社内内部向け

社内文書検索システムRAG

社内内部向け

交通データを活用した価値創出

JR東日本では、リアルタイム運行情報などのオープンデータを活用し、
社内外のパートナーとの連携を通じて、新たな顧客体験価値の創造や業務のDXに取り組んでいます。

JEMAPS

鉄道の運行状況や気象情報、設備の状態などをデジタル空間上に再現する「デジタルツイン」プラットフォーム。 リアルタイムのデータを統合・可視化することで、安全・安定輸送の実現と効率的なオペレーションを支援します。

プレスリリース

どこトレダイヤル

生成AIと音声認識技術を活用し、電話で列車の運行情報を自動案内する内製サービス。 スマートフォンの操作に不慣れな方でも、簡単かつ直感的に情報を取得できるアクセシビリティの高い情報提供を実現しました。

プレスリリース

経路検索サービス連携

GoogleマップやAppleマップといった国内外で広く利用される経路検索サービスと連携。 リアルタイムの運行情報を反映した経路案内に加え、新幹線や特急列車の予約までをシームレスに繋ぎ、利便性を向上させています。

プレスリリース

JR東日本アプリ

乗換案内、運行情報、駅情報などを確認できる「JR東日本アプリ」の内製開発を行っています。スピード感を持って開発が行える手法を採用し、お客さまの課題やニーズに迅速に対応できるよう努めています。現在の遅れ時間を反映した経路検索機能や、リアルタイムな運行情報・混雑状況の表示など、機能の新規追加やリニューアルなどを行っています。

プレスリリース

2.4 リアルタイムデータ連携基盤 (RT-DIP)

複数の交通事業者が持つリアルタイムな運行情報を集約し、経路検索サービス事業者などへ提供するための取り組み等も行っています。

プレスリリース

3. JEMAPS

JEMAPS:概要

4. どこトレダイヤル

どこトレダイヤル:コンセプト

エレベーターピッチ(利用者向け)
  • 「悪天候で電車がくるか不安なときに運行情報を確認」したい
  • 「スマホがちょっと苦手なあなた」向けの、
  • 「どこトレダイヤル」というプロダクトは、
  • 「電話自動案内サービス」です。
  • これは「電話でスムーズに運行情報を問い合わせ」でき、
  • 「慣れないPC/スマホの画面操作が要求されるWebサービス/モバイルアプリ」とは違って、
  • 「使い慣れた電話をかけるだけで確認できる機能」が備わっています。
エレベーターピッチ(サービス提供者向け)
  • 「予算が限られる中、設備が整ってない駅でも、スマホがちょっと苦手なお客さまなどへも情報格差なく運行情報をお届け」したい
  • 「公共交通事業者や自治体」向けの、
  • 「どこトレダイヤル」というプロダクトは、
  • 「運行情報提供ツール」です。
  • これは「スマホがちょっと苦手なお客さまでも電話でスムーズに運行情報を確認」でき、
  • 「電光掲示板のような案内設備」とは違って、
  • 「物理的な設備を必要としないため、イニシャルコストゼロかつ安価にどこでも運用」することができます。

どこトレダイヤル:デモ

どこトレダイヤル:これまでの開発過程

どこトレダイヤルは、ITがちょっと苦手な方向けの電話による運行情報案内サービスです

第ゼロ期:黎明期

羽越本線にて、プッシュボタン方式による電話運行情報案内サービスを開始。基礎技術の検証を行いました。

第一期:音声認識導入

水戸支社管内へ展開。AWS Lex(スマートスピーカー等で利用される技術)を導入し、音声入力方式へ進化させた。

原ノ町駅の駅員社員のご実家へ伺い実際のユーザーに近い方にユーザーインタビューなども実施

第二期:生成AI活用と汎用化

引き続き水戸支社管内で、生成AIによるユーザー発話の意図解釈を導入。より自然な対話を目指し、全線区展開やJR東日本以外での利用も視野に入れた汎用的なシステム基盤を構築した。

本番リリース

「どこトレ」導入エリア全線区でのサービス提供開始。

この期間、生成AI技術は目覚ましい進化を遂げた。第一期実証実験時点ではデータ量・コスト・処理速度の面で全線区への展開は困難視されていたが、「どこトレダイヤル」の開発と共にAI技術も進歩し、実現の目途が立った。

どこトレダイヤル:利用状況(本番リリース後)

着電総数: 3,497件 (7/23~8/31)

どこトレダイヤル:利用状況分析

どこトレダイヤル:GTFS-RT形式の活用

GTFSとは? (静的データ)

General Transit Feed Specificationの略で、バスや鉄道の時刻表や路線、駅の場所といった、基本的に変わらない情報をまとめた世界標準のデータ形式です。「計画」の情報と考えると分かりやすいです。

GTFS-RTとは? (リアルタイムデータ)

GTFS-Realtimeの略で、GTFSの「計画」に対する「今どうなっているか」というリアルタイム情報を提供します。遅延、運休、現在の列車位置などが含まれます。「実績」の情報です。

ユーザーとの対話フローに沿って、各ステップで最適なGTFS/GTFS-RTフィードを使い分けることで、開発工数を削減しつつ価値の高い情報提供を実現します。

1. 路線・駅選択

「常磐線の水戸駅から乗りたい」

ユーザーが指定した路線に運行障害がないか、まずservice-alertsフィードを確認します。

⚠️ service-alerts (運行情報)

遅延や運休などの運行トラブル情報です。

informed_entity (route_id)
description_text

📢 案内文

常磐線は、大雨の影響により、現在運転を見合わせております。

「上り方面」→「はい」

2. 個別列車案内

stop-times(時刻表)とvehicle-positions(列車位置)を統合し、個別列車を案内します。

🕒 stop-times (時刻表情報)

いつ、どの列車が、どこへ行くかの計画情報です。

scheduledDeparture
headsign
departureDelay
+tripIdで結合

📍 vehicle-positions (列車位置)

列車が「今」どこにいるかの実績情報です。

currentStatus
stopId

📢 最終的な案内文

10時25分発 東京行きは、 約5分遅れで、 現在、有楽町駅に停車中です。」

※実際にはstop-timesは静的なファイルだけでなくリアルタイム情報を加味しているためOpenTripPlannerのstop-times APIの形式のような形式にしています。

生成AIでお客さまとの対話を賢くし、標準的なGTFSデータでシステムの汎用性をグッと高めました。🤖💡
これにより、社内外の広い範囲への展開を見据えた汎用性を持ちながら、開発も効率的に、そして多くの人々に情報を提供できる仕組みが完成しました!

どこトレダイヤル:音声入力と精度

JR東日本のデータ

🚃💡当社データはもちろん、それ以外も含めた交通データを使ったアイデア、楽しみにしております!!🙌✨

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